日経225連動ETFとTOPIX連動ETFの“ベア型”に2倍タイプが登場しました。日経インバース投信など“1倍ベア型”ETFは、日経レバレッジ投信などの“ブル2倍型”に比べると今ひとつ人気がなかったのですが、この“ベア2倍型”の出足はなかなか良いようです。指数の日々騰落率のマイナス2倍で価格が変化するという、「2倍」がウケているものと思われます。
連動対象 | ||
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倍率 | 日経225 | TOPIX |
× 1 | 1320 1321 1329 1330 1346 1578 | 1305 1306 1308 1348 |
× 2 | 1570 (NEXT FUNDS)日経平均レバレッジ 1579 日経平均ブル2倍上場投信 |
1568 TOPIXブル2倍 |
×-1 | 1571 (NEXT FUNDS)日経平均インバース 1580 日経平均ベア上場投信 |
1569 TOPIXベア |
×-2 | 1357 (NEXT FUNDS) 日経ダブルインバース | 1356 TOPIXベア2倍 |
225、Topix共に、×2、×-1、×-2倍で連動するETFが出揃いました。上の表の「×1」は銘柄コードだけを示していますが、これは指数の動きそのものに連動するように組成された普通のETFです。
株価が大きく動いた先週末、“2倍ブル型”“2倍ベア型”のETFはどんな値動きだったでしょうか。
8月7日 | 8月8日 | 前日比 | 騰落率 | |
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日経225 | 15232.37 | 14778.37 | -454 | -2.98 |
1570 レバレッジ | 10100 | 9520 | -580 | -5.74 |
1357 ダブルインバース | 5330 | 5660 | +330 | +6.19 |
TOPIX | 1258.12 | 1228.26 | -29.86 | -2.37 |
1568 ブル2倍 | 20980 | 20000 | -980 | -4.67 |
1356 ベア2倍 | 8980 | 9400 | +420 | +4.68 |
概ね指数の±2倍の結果になっています。
株価指数というと、「個別銘柄に比べて値動きのダイナミックさに欠ける」という印象を持っている人もいることでしょう。しかし、その株価指数も「2倍で動く」となると、元気な個別株並みの変動率になります。日経225およびTOPIXの値動き2倍と、ほぼ同じボラティリティーの個別株の例です(データ:4/1/2011(または上場来)〜8/1/2014、日々騰落率の標準偏差)。
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ちなみに、株価指数並み(「×1倍」)では
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となります。1倍では短期トレードする気が余り起きませんが、2倍ならやる気が出そうです。
前に、【1570】「日経レバレッジ指数ETF」の使い方、で触れたように長期保有には注意が必要です。
2008年・年初の日経225は、14691円でした。これを100として、×1(日経225そのもの)、×2(レバレッジ)、×-1(インバース)、×-2(ダブル・インバース)の推移を試算してみました。2013年5月10日に日経225は、14608円(99.4)とスタートの水準近くまで戻しました。しかし、×2(レバレッジ)の戻り方は64.0、-1(インバース)は65.7、-2(ダブル・インバース )は実に28.1という水準までしか戻していません。
これは、株価が同じ騰落率で上げ下げを繰り返すと株価は下がる、という計算上の仕組みによるものです。上げ下げを繰り返した結果株価が最初の株価に戻るということは、上げの騰落率合計>下げの騰落率合計、ということにもなります。従って、×2よりも、×-2の方が株価の上げ下げ繰り返しのダメージが大きくなります。
それは相当な超長期に限った話かというと、どうやらそうではなさそうです。
2013年5月10日の日経225(14608円)を100とした、その後の推移です。先週末の日経225は14778円(101.2)でスタートからは少し高い株価となっていますが、×2(レバレッジ)は94.9(あれ?実際に日経レバETF(1570)は10070円→9520円)、-1(インバース)は91.9、-2(ダブル・インバース)は78.5です。この間、約15ヶ月ですが、やはり×-2倍は上げ下げ繰り返しダメージが大きいと見られます
これら2倍型ETFの出番は、矢印で示したように、2013年5・6月のような急落場面にあるようです。指数値が約-15%近く下げたところ(約75)で、×-2倍は130と30%程の上げになっています。しかし、市場の急落後の乱高下→反発を放置すると、せっかくの利益も残念なことにもなりかねません。
ベアにしてもブルにしても「×2倍」は、期待した方向に一方的な値動きが続いた場合には価格は1倍ものに比べ2倍以上に上がります。
2012年11月14日を100として、その後の日経225の推移です。2013年5月22日までに80.4%上昇したわけですが、×2倍だと、216.9%の上昇で、×1倍ものの2倍よりかなり大きな上昇(216.9÷80.4=約2.7倍)となっています。×2倍ものに、より大きな複利効果が現れています。
実際の日経レバレッジ(1570)は、3575円→11480円(100→321)となりました。これだけ強いトレンドは何年かに一度のものと思われますが、一方的な上げが継続すると×2倍ものは×2以上に上がります。反対に、一方的な「下げ」が継続すると×「-」2倍ものは×2以上に上がります。ダブルインバース(ベア)は一方的な「下げ」期待のものになります(株価急落時の例は図表04の2008年あたりを参考にして下さい)。
つまり、一方的な上げ下げが「継続」するという点が2倍型ETFの非常に大きなポイントで、間に乱高下が交じると価格が劣化する要因になることは十分理解しておく必要があります。
上げ下げ繰り返しによる減価あるいは一方向への値動きが継続した時の複利効果特性は、日経225かTopixに関係なく共通のものです。
(付記)指数連動対象の銘柄が組み込まれた普通のETFと違って、レバ・インバ(ブルベア)ものETFには配当金は基本的にありません。
日経225とTOPIX、いずれも日本株市場全体を示す株価指数ですが、どちらが日本株市場全体を振り回しているかと言えば、日経225です。Topixはむしろ振り回される方と言っていいかもしれません。振り回している225の動きを予測するのは難しいですが、振り回されるTopixは225の後追いで動くであろうことは想像できます。実際のところは、ほぼリアルタイムでTopixは225の動きを取り込んでいくわけですが、日々の引けベースで見ても、後追い傾向は確認できます。
図表-07は、225が上昇(下落)でTopixをロング(ショート)、225をショート(ロング)する売買を検証してみた結果です。225の動きに順張りでTopixを売買するわけですが、225の先の行方はわからないので、225でヘッジします(ヘッジがない場合はグレイの線のようになってしまいます)。
「×1倍」のETFを使った売買結果も出してみました(配当金は考慮せず)。
1トレード益は平均で0.1%です。手数料などのコストを考えると実践では厳しいかもしれません。
日経レバレッジ(1570)とTOPIXブル2倍(1568)との組み合わせです。1トレード益は平均で0.25%です。少し現実味が出てきますが、ただし、ドローダウンも大きくなる点には注意が必要でしょう。
参考として、両ETFの前日比騰落率の差に逆張りで売買した結果を青線で示しておきます。相対的に上がっている方を売って、下がっている方を買う売買です。実際には引値がどうなるかわからないので、ザラ場で市場全体の動向(上げ下げ)も併せてチャンスを探ることになります。
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