株式市場の9月の目玉といえば、JALの再上場。JALといえば、やはり「優待」。優待といえば…。今から仕込むなら、12月権利確定銘柄でしょう。と、いうわけで、6月・12月に株主優待の権利が確定する銘柄をいくつかチェックしてみました。
以前、本欄でJASDAQ―TOP20指数を取り上げた際、日本マクドナルド(2702)について、「3月〜5月と9月〜11月は上がりやすい月」「6月〜8月と12月〜2月は下がりやすい月」という“優待アノマリー”を紹介しました。
他の6月・12月権利確定銘柄でも、同じような傾向はあるのでしょうか。愛知地盤の外食チェーン、物語コーポレーション(3097)を調べてみました。
図1は、「3月の月初営業日の引値でロング、6月の月初営業日の引けで売却」および「9月の月初営業日の引値でロング、12月の月初営業日の引けで売却」という売買の累積パフォーマンスの推移です。かなりいい感じの右肩上がりになっています。この銘柄、確かに“優待アノマリー”があるようです。
とはいえ、2011年3月から5月までのロングは、大震災の影響で3月にパフォーマンスが大きく落ち込んでいます。その後、株価が戻したので、何とかプラスの利益は確保していますが、こうした市場全体の影響をもろに喰らうのは、できれば避けたいところです。
とくに、秋は市場全体が下がることが多い時期。9月、10月は「苦月」「渋月」などと言われたりもします。これから12月権利確定銘柄を買うとすれば、この“秋の市場全体リスク”は想定しておいたほうがよいかもしれません。
対策として、たとえば、日経225先物の売りでヘッジしたらどうでしょうか。
「×1倍」は、この銘柄のロングと同金額分の225先物でヘッジ(先物売り)したと想定した場合の累積パフォーマンスです。“リーマン・ショック”の市場大暴落のところでは効果はバツグン。大震災のときも、パフォーマンスの落ち込みがかなり押さえられました。ただし、2009年前半に市場全体が復調していた局面では、先物の戻しのほうが強く、ヘッジが逆効果になってしまっています。「×0.5倍」は、半額分のヘッジですが、このくらいのヘッジが中庸、といったところでしょうか。
なお、この銘柄の株価は1500円弱(9月7日終値:1475円)なので、ミニ先物1枚をヘッジに使うとすると、ロングする株数は600株程度になります。この銘柄は流動性が高くないので、600株程度でも引成注文はやりにくいかもしれません。ミニ先物1枚に満たない株数をロングする場合は、日経平均連動型のETFの空売りでヘッジする手段があります。ただし、貸株料のほか、建玉の管理費(通常1か月ごと)が徴収されるので、コスト面には注意してください(売買の検証結果では、これらのコストは考慮していません)。
ところで、JALといえば、ANA。ANAといえば、やはり「優待」です。この優待銘柄の大御所・全日本空輸(9202)をヘッジに使ってみたらどうでしょうか。この銘柄は市場平均との連動性も高いので、案外いいかもしれません。
物語コーポレーションの各3か月ロングの損益と、同額分のANAショートの損益を合計したパフォーマンスです。案外いい、どころではありません。かなり良好な結果です(3月については、ANAの配当金相当額の支払いが生じますが、そのコストは検証結果には含まれていません)。
それにしても、何故このような好結果が出てくるのでしょうか。
07年7月以降の日々の上昇下落率を月別に合計してみました。ピンクはプラス(上昇)、水色はマイナス(下落)です。1月、2月を除けば、物語コーポとANAの色が見事に逆になっています。
225先物は3月、4月は上昇する傾向があるのに対して、ANAは市場平均との連動性が高く、225採用銘柄であるにも関わらず、下がる傾向があります。ということは、ANAにも、“優待アノマリー”が存在していると考えられます。つまり、3月と4月は、物語コーポとANA、双方の優待アノマリー発動でパフォーマンスが上がる。5月および9月〜11月は、物語コーポの優待サイクルによる上げと、市場平均が軟調なことによるヘッジ益が合わさって収益を伸ばしているわけです。
3月については、市場平均が上がりやすいことと、ANAのヘッジ売りにともなう配当金相当額支払いを考えると、この月はヘッジを見送るのも一策といえます。
他の6月・12月権利確定銘柄はどうでしょうか。
三光マーケティングフーズ(2762)について、同じように「3月〜5月、および9月〜11月ロング」と、それに先物ヘッジを付けたケース、ANAヘッジを付けたケースを調べてみました。緑の線は、9月〜11月のロングだけの累積パフォーマンスですが、08年は“リーマンショック”の影響もあってひどい損失だったものの、ここ2年は優待狙いの買いが入るようになっている模様です。
もう1銘柄。
ブロンコビリー(3091)も傾向としては似ています。直近はロングのパフォーマンスが伸び悩んでいますが、ヘッジ付きのほうは利益を伸ばしています。
これらの銘柄についても、月別の詳細を見てみましょう。
三光マーケ、ブロンコビリーともに9月、10月は下落傾向ですが、そこで225先物やANAのヘッジが効きそうなことがわかります。
他に、こんな銘柄も効果がありそうです。
6月・12月権利確定銘柄ならどの銘柄でも、ここまで見てきた銘柄と同じような傾向があるのか、というと、そうでもありません。かなりマチマチです。ここまで見てきた銘柄は、物語コーポ=焼き肉食べ放題、三光マーケ=東京チカラめし、ブロンコビリー=ステーキ・ハンバーグ、日本マクド=ハンバーガー、ジョイフル=ステーキ・ハンバーグと、なぜかどれも「肉」系。みんな肉が好きなのか、肉系銘柄は優待アノマリーが出やすいような印象があります。
次回は、ANAと似た値動きの3月・9月権利確定銘柄をチェックしてみます。
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