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最強の株の買い方「バーゲンハンティング入門」

【確報】22年の下落は「大きい二次的調整」

日経平均株価の上昇相場は「継続」。しかし手放しには喜べない現状


5月連休明けから上昇が加速。ついに21年9月高値を越える

本書の最後、あとがきで「22年の下落は20年4月からの上昇相場の途中に起きた大きい二次的調整だったのか、それとも上昇相場は終わり、22年から新たな下落相場が始まったのか」、その判断が23年3月時点で問われている、としています。

その判断の決め手は、日経平均株価が22年3月9日の最安値を下回るか、下回らずに上値・下値を切り上げる動きになるか、どちらが先か、です。前者ならば「新たな下落相場の始まり」、後者ならば「大きい二次的調整」だった可能性が徐々に高まっていく。さらにその動きが進展して21年9月14日の最高値3万795円を超えて上昇したときに「大きい二次的調整」だったことが確定します。

この結論が出るまでにはかなり時間を要するのではないかと予想していましたが、意外にも本書の発売から1ヶ月と経たずに結論が出てしまいました。

日経平均株価は23年1月4日の安値2万5661円から基調が再び上向き、3月9日の高値から大きく下げますが、3月16日に2万6632円で下げ止まって上昇再開。5月1日に3月9日の高値を越え、小保合いを形成した後、5月12日から上昇に勢いがつき、17日に3万円台を回復。そして19日、21年9月14日の高値を越えるに至っています。

その後も上値を伸ばし、5月末時点での最高値は29日につけた3万31560円。80年代バブル崩壊後、33年ぶりの高値です。この一連の動きによって、22年の下落は上昇相場の途中で起きた大きい二次的調整であり、20年4月からの上昇相場は継続していることが確定しました。


TOPIXも上昇相場継続が確定。ところが市場の実態は{?}

TOPIXは日経平均株価よりもひと足早く5月16日に21年9月14日の高値を超え、5月23日まで高値更新を続けています。よって、TOPIXも20年4月からの上昇相場は継続していることが確定しています。

日経平均株価とTOPIXの月足チャートを見ると、長らく続いた上昇相場途中の調整が終わり、5月の月足陽線から上昇相場が再開したという、チャートの解釈がよくわかると思います。日経平均株価は80年代バブルの最高値3万9815円にトライする動きが始まった、といった強気の論調がメディアに出てくるのも頷けるところでしょう。

しかし、日本株市場全体がそうした強い動きになっているのか、というと、実はそうではありません。

たとえば、日経平均株価は5月29日まで最高値を更新していますが、29日に過去1年来の高値を更新した個別銘柄数はわずか177。全上場銘柄数の4.6%でしかありません。残り95%以上の上場銘柄は、「33年ぶり高値」どころか、過去1年の高値にすら達していないのが実情です。

高値更新銘柄数の動向を見ると、今年3月9日の高値までの上昇局面のほうがよほど勢いがありました。

日経平均株価とTOPIXは5月から上昇が加速していますが、高値更新銘柄数は5月9日が二番天井のようになり、その後は減少傾向です。

また、TOPIXにしても23日の最高値以降は調整気味の動きになっています。つまり、5月終盤はもはや日経平均株価の独走状態。日経平均株価と市場の実態との間にはかなり温度差が生じています。


同じ日本株市場のインデックスとは思えないマザーズ指数のトレンド

本書の中でもふれている通り、株式市場の動向を伝えるメディアのほとんどは「日経平均株価=日本株」です。そうした報道だけを見ていると、いま株式市場はバブル到来みたいなことになっているのか、という印象を持つかもしれません。しかし、TOPIXはまだいいとしても、たとえばマザーズ指数はこんな具合です。

マザーズ指数は20年3月の“コロナショック”の大暴落の後、4月から強烈な反発となり、20年10月半ばに“コロナ以前”どころか、18年1月の“VIXショック”直前の高値水準まで上昇しています。しかし、そこから上値が伸びなくなり、21年11月から強烈な下落となって22年6月まで下げ止まりませんでした。22年6月20日の安値は、コロナショック大暴落の最安値も視野、という水準です。

その後、安値は更新していないものの、水準はまるで切り上がりません。日経平均株価やTOPIXの月足と見比べてみると、これが同じ日本株市場のインデックスなのかと言いたくなるのではないでしょうか。

この5月末時点までのマザーズ指数の値動きを素直に解釈するならば、22年6月の安値を叩きに行ってもおかしくない。そこで安値を更新した場合には、コロナショック大暴落の最安値をも下回りかねない、というのが予想されるメインシナリオです。

言い換えれば、このシナリオは「21年11月からの下落相場が再開する」。つまり、この時点で予想される値動きの方向性が日経平均株価と完全に逆行しています。本書の中で繰り返し取り上げている“好ましくない乖離”にほかなりません。


足元の“好ましくない乖離”は06年ほどは悪くはない

こうした“好ましくない乖離”が非常に鮮明に現れていたのが、06年1月の“ライブドアショック”後でした。その当時の状況は本書101ページで紹介していますが、現状はそこまで悪いわけではありません。たとえば、マザーズ指数は極めて微妙な状況ではあるとはいっても、現時点では06年以降のように完全な下落相場を突き進んではいません。

また、高値安値更新銘柄数にしても、06年1月以降のように「高値更新銘柄数は激減。安値更新銘柄数は着々と最多を更新」という深刻な事態には陥っていません。というのも、06年1月以降は小型・新興株が悉く売られていましたが、目下のところ、小型・新興系銘柄の中にもしっかりした動きを続けている銘柄は少なからずあるからです。

そのことは、旧東証2部と旧ジャスダック市場に上場していた大方の銘柄が移行した東証スタンダード市場の推移からもうかがい知ることができます。

06年は、東証2部指数も日経ジャスダック平均も“ライブドアショック”を境に下落相場に転換していたのに対して、東証スタンダード指数は方向性としては日経平均株価と同じです。5月に入ってからの値動きは、日経平均株価に比べると弱く、上値の伸びが止まっていますが、年初からの上昇トレンドは崩れていません。明らかにマザーズ指数のトレンドとは異なります。


市場の実態に最も近い?「東証スタンダード市場指数」に要注目

東証スタンダード市場指数については、本書122ページで取り上げています。「新市場区分スタート当初は、2部指数や日経ジャスダック平均に代替する指数として期待していたものの、始まってみると、どうも東証プライム市場指数やTOPIXとあまり変わらない。おそらく、日本オラクルなど旧東証1部の時価総額の大きい銘柄がスタンダード市場に入ったからではないか」と述べていますが、本書を執筆していた22年12月時点までは確かにそうでした。

それが23年に入って、この指数の値動きの様子が東証プライム市場指数やTOPIXとは違ってきています。

端的だったのが2月から3月9日の高値に至る上昇局面です。このとき、日経平均株価もTOPIXも、またプライム市場指数も、1ヶ月以上も上値を押さえつけられ横ばい状態を続けていたのに対して、スタンダード市場指数は実に見事な右肩上がり。他方、図4で見た通り、この時期は高値更新銘柄数も着実な増加基調で3月9日が今年の最多。実感としても「相場がよい」という感触が確かにありました。

ところが、3月10日からの急落で失速。日経平均株価が最高値更新の動きになった5月終盤、スタンダード市場指数は逆に弱含みな動きになっています。同じ時期、高値更新銘柄数は3月9日に至る上昇局面に比べるとだいぶ少ない水準です。ここに日経平均株価が「33年ぶり高値」となっている中での“好ましくない乖離”の実像が見てとれます。

本書の中で指摘しているように、旧東証1部だった時価総額の大きい数銘柄の値動きがスタンダード市場指数に対して大きな影響力を持っていることは間違いありません。旧東証2部や旧ジャスダック市場の100銘柄が束になっても日本オラクルの時価総額に及ばないのが現実です。

しかし、旧東証2部と旧ジャスダック市場の300銘柄、500銘柄、あるいはそれ以上の銘柄が同じ方向に動くとすれば、指数に対する影響力は日本オラクルを上回るでしょう。そして、それだけ多くの中小型銘柄が同方向で動いているならば、それは相場に対する実感とも一致するはずです。

つまり、この指数には、日経平均株価やTOPIXに対する寄与度の高く報道でも取り上げられやすい大型株ではない、中小型・新興系銘柄が総じて同じ方向に動いたときの状況が反映されています。その意味で、市場の実態に最も近いインデックスではないかと、今年に入ってからの値動きを見て考えるに至っています。

難点は、指数がまともに算出・公表されるようになったのが22年6月27日からで、それ以前の相場局面・株価水準との比較ができないことです。現状の最高値が過去から見てどういう位置なのか。これは先行きの展開を予測するうえで必要不可欠な情報です。ところが、それがわからない。これは「予測」に使えるはずのチャートとしては致命的といっても過言ではありません。こうなると、東証2部指数や日経ジャスダック平均を葬った新市場区分が恨めしくも感じてしまいます。

しかし、今さら何を言ったところで仕方がありません。過去との比較による予測は無理でも、算出・公表が始まってからの日々の推移を追うことによって、現在進行している市場実態の動向を知る手掛かりにすることはできます。現時点ではまだ断言できませんが、市場実態を知ることに関しては、インデックスの中でもこの指数が最強の情報かもしれません。

本書の第3章で述べている通り、長期的な相場の転換点の初期段階で“好ましい乖離”“好ましくない乖離”が現れることがしばしばあります。その兆候を捉えるためにも、日経平均株価やTOPIXの動きと比較しながらスタンダード市場指数を常に見ておくことをお勧めします。


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