<その1>買った後に値下がりしても、もはや下げ幅は限定的。
→含み損状態になっても、損失の額は軽微。かつ、期間も短くて済む
<その2>どれもこれも株価は超格安。銘柄選びに苦労も手間も不要。
<その3>その後にやってくるのは「大相場」!
→超格安になるのを待って買うだけ。誰でも資産が驚くほど増える
「バーゲンハンティング」というタイトルがついていますが、本書は決して「大暴落が来る!」と予想しているわけでもなければ、暴落を煽ろうという意図も全くありません。
本書のテーマは、10年、20年という長期的な視点に立った資産形成です。このテーマが「バーゲンハンティング入門」となるまで、実は3回も企画案がボツになっています。本書には、ボツになった企画が裏テーマ的に盛り込まれていたりします。
将来のための資産形成というと、昨今は「長期・分散・積立」が最良のように言われています。税金の優遇措置がある[つみたてNISA]はそれを象徴する資産形成支援制度でしょう。
つみたてNISAの解説などを読むと、積立投資は「投資」という言葉からイメージされる「ハイリスク」ではない。毎月一定額ずつ長く積み立てを続けていれば、安定的な資産形成ができる。投資する対象が世界の株式・債券に分散するグローバル分散型の投資信託ならば、より大きく資産を増やせる。しかも、自動的に毎月買い付けが行われるので、ほったらかしでラクラク資産形成。と、あたかも“いいことづくめ”のように語られています。
しかし、積み立てであっても「投資」は「投資」。リターンが期待できるならば必ずリスクが存在します。“いいことづくめ”はあり得ません。実は、ボツになった企画案のひとつは「『つみたてNISA』を疑え!」という仮タイトルでした。
おそらく、20年以上積立投資を続けていれば最初に期待した通りの成果を手にできると思います。しかし、その成果にたどり着くまでの道のりは相当に険しいのが現実です。
そもそも、この「長期・分散・積立」とは何かといえば、世界中の株と為替のリスクを幅広く取りまくり、抱え込むリスクを長期間にわたってどんどん拡大させ、抱え込んだ巨大なリスクと表裏一体の関係にあるハイリターンを得る、という投資手法です。
20年もの期間を想定すれば、その間に世界同時株安のような事態が起きたり、世界的な大不況で市場が長らく低迷したり、抱え込んだリスクが含み損と化すことがあっても全く不思議ではありません。一定額ずつ買い付けることによるドルコスト平均法の効果も、積立期間が長くなるにつれて薄れていきます。買い付ける対象が株式や為替であるからには、「安定的に、着実に、資産が増えていく」ことはありません。
積立投資の極めて皮肉なところは、含み損状態になっている期間が長ければ長いほど、相場が反転した後にもたらされるリターンが大きくなる点にあります。別の言い方をすると、積立期間中に含み損を長らく抱え、それに耐え続けなければ、長期の積立投資でドルコスト平均法のメリットを享受することはできないということです。
何故かというと、買い貯めた投資信託の資産評価額の収益率は、投資信託の時価(そのときどきの基準価格)よりも平均買付単価が安ければ安いほど高くなります。では、どういうときに平均買付単価が安くなるのかというと、投資信託の価格よりも買い付ける時点での平均買付単価が高いとき、つまり、含み損状態にあるときです。よって、その期間が長いほど、平均買付単価は下がり、それが将来のリターンをより大きくすることにつながります。
●投資信託の価格よりもその時点での平均買付単価が安いとき
平均買付単価<投資信託の価格=資産額は含み益状態
●投資信託の価格よりもその時点での平均買付単価が高いとき
平均買付単価>投資信託の価格=資産額は含み損状態
そうはいっても、含み損状態というのは実に辛いものです。積立を始めて10年後、15年後にその状態になろうものなら、含み損の額も相当な大きさになっているでしょう。それに耐えて積み立てを続けなければならない、というのが積立投資です。“いいことづくめ”どころか、苛酷といっても過言ではありません。
仮に、「含み損状態は良いことだ」と頭では理解していたとしても、実際問題として続けることができるでしょうか。そのときはおそらく不景気です。不景気でも安定した収入が得られるサラリーマンならともかく、フリーランスの人はどうでしょうか。いまは十分稼げていても、10年後、15年後がどうかわかりません。積み立てを続けたくても、先立つものがなければ続けられません。経済的に厳しい状況になっていれば、損失状態になっている投資信託を売って現金化せざるを得なくもなります。そうなったら税優遇措置も全く無意味です。
将来のための資産形成はもちろん大事です。しかし、そのために辛い思いをする必要がどこにあるのでしょうか。
バーゲンハンティングは、そんな状況を強いられなくとも、十分な成果が見込める資産形成の方法です。
バーゲンハンティングに必要なことは、市場が超格安になるまで待つことと、その間にできうる限りの軍資金を準備しておくこと。それだけです。含み損状態になったとしても損失額はもはや限定的。その期間もそう長くはないはずです。積立投資をするつもりで現金を貯めておけば、積立投資よりも将来の資産額は必ず大きくなる、と断言できます。
本書の第2章では、シミュレーションや自分自身の実体験を交えて「長期・分散・積立」の現実を紹介するとともに、それに比べてバーゲンハンティングがいかに手堅く、成果が期待できる資産形成の方法かを解説しています。この部分が「本書のテーマは長期的視点に立った資産形成」と言う所以でもあり、ちょっと力が入っています。
バーゲンハンティングは、株式市場が超格安になるのを待って買うだけ、という至極簡単な投資行動ですが、日ごろから株の売買をしている人の多くはこれが実行できません。その理由は、そのとき損失額がみるみる拡大していく恐怖で冷静ではいられなくなるからです。
そのため最初の企画案では、株式市場とは無縁の人を想定した「株デビューするなら市場大暴落時が最強」という仮タイトルをつけていました(この企画案は、「株式投資をしたことがない人が『暴落』などと聞いたら、怖くて逃げるだけだろう」と一蹴されてしまいました…)。
しかし、日ごろから株の売買をしている人でも、上昇相場は終わりではないか、という天井圏の予兆を捉えることができれば、その時点で買い玉を減らすことによって最悪の事態に備えるという対応はとれます。市場暴落が現実となったときにはそれで損失の拡大は抑えられ、資金的な余力が確保されていればバーゲンハンティングに参加できると思います。
本書の第3章では、ITバブル以前の98年から約25年の相場を5つに区分し、相場サイクルの天井・大底を示唆していたかのような現象の数々を取り上げています。加えて、過去の天井圏・大底圏で起きていた身の回りの出来事も紹介しています。この章は、投資ビギナーの方よりもむしろ日ごろから株の売買をしている方に興味を持っていただけるかもしれません。
この第3章の結果を踏まえて、第4章では、具体的にどういう状況になったらバーゲンハンティングに出ればいいのか。さらに第5章では、上昇相場になった後にどういう行動を取れば“次”の超格安バーゲンにも参加できるのか。過去の市場暴落のクライマックスや上昇相場の最終局面に観測されたデータや現象をあげています。
その中で何度か登場する「過去1年来の高値安値更新銘柄数」や信用取引残高関連データは当サイトでも掲載しています。売買出動のタイミングを逃さないよう、是非ご活用ください。
■「損をするのはイヤだ」という理由で投資には後ろ向きな方
■株式投資を始めてみたいけれども、きっかけがつかめないままでいる方
■かつて株式投資をして失敗。いまは株から遠ざかっている方
■株式市場と末永く付き合って資産を増やしていきたい方
■どうすれば「老後資金2000万円」を準備できるのか。真剣に考えている方